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Chrome 137 仕様変更発表まとめ
Google Chrome 137の主要な仕様変更発表のまとめです。(ベータ版発表・2025年4月3日時点での情報です)
要点
- 追加・拡張:
以下の機能が追加・拡張され、表現力・利便性が向上します
・フレックス/グリッドアイテムの音声読み上げ順の複雑な制御が可能になる
・生成AIによる文章校正・推敲や新規生成に対応する 等
- 仕様変更:
以下の仕様が変更されます
これを使用している場合は設定の移行等が必要になります
・フォーム選択項目等でOS設定の強調色がデフォルト適用される 等
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追加・拡張
CSS:if関数で条件分岐
CSS:複雑な配置での読み上げ順を指定するプロパティ
フレックス/グリッドコンテナが複雑に配置された場合に音声読み上げの順序を制御するプロパティが使用可能になります。
詳細はGoogleの記事「論理的な連続フォーカス ナビゲーションに CSS 読み上げフローを利用する」および読み上げフローの例
でも説明されています。
reading-flow
プロパティ
- 文書内の基本的な読み上げの流れ方を指定します。
reading-flow: normal;
…DOM内の要素の順序に従って読み上げを行います。デフォルト値はこれです。
reading-flow: source-order;
…基本的にDOM内の順序に沿って読み上げを行います。ただし後述する
reading-order
プロパティの指定があるものはそちらが優先されます。reading-flow: flex-visual;
…フレックスアイテムの表示上の順序に応じて読み上げを行います。書字方向の指定がある場合はそれも考慮に入れます。(フレックスコンテナにのみ適用)
reading-flow: flex-flow;
…
flex-flow
プロパティ(コンテナ領域内のフレックスアイテム配置方向)の指定に沿って読み上げを行います。(フレックスコンテナにのみ適用)
reading-flow: grid-rows;
…行方向の並び順(左→右の横書きの場合は左上から行単位に右方向)に読み上げを行います。(グリッドコンテナにのみ適用)
reading-flow: grid-columns;
…列方向の並び順(左→右の横書きの場合は左上から列単位に下方向)に読み上げを行います。(グリッドコンテナにのみ適用)
reading-flow: grid-order;
…基本的にDOM内の順序に沿って読み上げを行います。ただしアイテムに
order
プロパティによる順序指定が行われている場合はそちらが優先されます。(グリッドコンテナにのみ適用)
reading-order
プロパティ
- 読み上げ順/優先度を要素ごとに個別に指定したい場合用のプロパティです。
- 要素ごとに整数でプロパティ値を指定し、値の小さい方から大きい方へ順に読み上げを行います。デフォルト値は0です。よって、読み上げ順を先にしたいものはマイナスの値、あとにしたいものはプラスの値を付与していきます。
CSS:アニメーションの移動経路指定が複雑なパスに対応
offset-path
プロパティ(要素が移動するアニメーションで使用する移動経路を指定する)で、値に
shape()
関数を使用した複雑なパスを指定できるようになります。
SVGSVGElement
がtransform
属性に対応
- SVG API
の
SVGSVGElement
インターフェイス(SVG要素のプロパティ/属性にアクセスするのに使用する)で、新たに
transform
属性(座標変換/回転/変形)が制御できるようになります。
SVGの外部参照の使用条件緩和
- SVG内の(別のシェイプを参照して複製・転用する)について、従来は
href
属性参照先SVGの中のシェイプをフラグメントID(
#○○
)で指定する必要があったのですが、条件により省略が可能になります。- 変更前:フラグメントIDが指定されていない場合は参照が失敗し、何も出ない
↓ - 変更後:フラグメントIDが指定されていない場合は、代わりにSVG内のルート要素を参照する(ルート要素でシェイプの参照が成立すればシェイプが転用できる)
href
属性に外部SVGファイル名・URLのみを入れても、参照が成立すればuseで呼び出せるようになり、参照時の煩雑さ解消・利便性向上に繋がります。 - 変更前:フラグメントIDが指定されていない場合は参照が失敗し、何も出ない
要素指定でビュートランジションする設定の煩雑さが緩和
view-transition-name
プロパティ(ビュートランジションの識別名を指定)について、以下の自動指定
が可能になります。個別にプロパティ値を手動設定する必要がなくなり、煩雑さが緩和されます。
view-transition-name: match-element;
…要素の識別名に基づいて一意の識別名を生成します。view-transition-name: auto;
…要素のid
属性に基づいて一意の識別名を生成します。
JavaScript:デバッグ用の関数コールスタックキャプチャー機能
- 無限ループ等の長い計算でWebページが応答なしになった場合、処理中の関数等の呼び出しスタック状況
をキャプチャーして保存する機能が追加されます。
キャプチャー内容はChromeのクラッシュレポート用API(Reports API)に渡されます。
開発者が原因調査・デバッグを行う際に活用できます。
Canvas API:2Dキャンバスの浮動小数点ピクセル形式対応拡大
- Canvas API
のインターフェイスのうち、
CanvasRenderingContext2D
・
OffscreenCanvasRenderingContext2D
・
ImageData
の色指定が、浮動小数点ピクセル形式に対応します。RGBAの色パラメーターを、整数ではなく浮動小数点数で記載することで、より広く細かい色が表現可能になります。
Document-Isolation-Policy
- Document-Isolation-Policy
… クロスオリジン分離用の従来の設定(COOP
・COEP
レスポンスヘッダー)とは別のポリシーです。COOP・COEPに依存せず、crossOriginIsolationをドキュメント自身から有効にする実装が可能になります。
COOP・COEPの影響でSharedArrayBufferの処理がパフォーマンス不足になる場合等に活用の余地があります。
暗号化のCurve25519対応強化
- Web Cryptography API
で、Curve25519アルゴリズム(暗号化用デジタル署名アルゴリズムとしては比較的新しく強力)が利用可能になります。
(Chrome Enterprise)アクセス先IPアドレスの収集機能
- Chrome Enterprise
で、組織管理下のChromeがWebにアクセスしたときのローカルIPアドレス・リモートIPアドレスを収集し、セキュリティ管理ログに送信する機能が追加されます。Chrome Enterprise Core(無料版)
でも提供開始される予定です。
WebAssemblyとJavaScript Promiseの連携強化
- JavaScript Promise Integration API
…WebAssemblyがJavaScript Promiseを含むAPIとやり取りできるようになります。
言語検出機能の強化
- Language Detector API
…AIを活用したテキスト言語検出が可能になります。入力テキストがどの言語(自然言語)で書かれているかを特定し、検出結果に合わせた処理が可能になります。入力された文字列に対して、検出された言語とその信頼スコアを順序付きリスト化して返します。
ブラウザ内要素選択関連の機能追加
Selection API(テキスト等の範囲選択部分に関する操作を行う)について、以下の機能が追加されます。
Selection.direction
プロパティ
- マウス等による範囲選択の移動方向が取得できます。
Selection.getComposedRanges()
メソッド
- 範囲選択情報(始点・終点等)を単一の
StaticRange
オブジェクトに合成します。
なお、本メソッドはシャドウDOMの境界を越えて範囲選択情報を合成・出力可能です。
Webアプリの複数ドメイン一括制御
scope_extensions
…Webアプリのマニフェストフィールド用項目で、Webアプリのスコープに別オリジン(ドメイン)が追加できます。
通常Webアプリのスコープは、単一オリジンの単一パスを基点として定義されます。が、scope_extensions
を使用すると、他の関連オリジンにスコープを広げることが可能になります。
WebAssembly:分岐ヒント通知機能
- WebAssembly
内の分岐処理が特定のパスを通る可能性が高い場合、その旨を処理エンジンに通知できるようになります。これにより、命令キャッシュヒットやレジスタ割り当ての最適化がしやすくなり、パフォーマンスの向上につながる場合があります。
WebGPU API:テクスチャ情報の記述手段強化
GPUBindGroup
(GPUを使用する表示要素等を、それぞれが使用されるシェーダーステージ情報込みでグループ化したもの)の情報を作成する際、
externalTexture
(外部テクスチャ)のバインディングに
GPUTextureView
が利用できるようになります。
WebGPU API:バッファコピー機能の利便性強化
GPUCommandEncoder
インターフェイス(GPUに発行するコマンドの作成に使う「コマンドエンコーダー」の制御に使う)のメソッドのうち、
copyBufferToBuffer()
メソッドの仕様が拡張されます。
- 変更前:コピー元・コピー先の情報とは別に、サイズとコピー元・コピー先のオフセット情報を引数として記述する必要があった(引数は合計5個)
↓ - 変更後:サイズとオフセットの記述を省略し、コピー元・コピー先の2つだけ引数に記述しても通る
- 変更前:コピー元・コピー先の情報とは別に、サイズとコピー元・コピー先のオフセット情報を引数として記述する必要があった(引数は合計5個)
オリジントライアル(先行試験実装)
サイト管理者がオリジントライアル登録することで、以下の機能が先行利用可能になります。
読み込み待ち中の表示抑止の選択肢拡大
link
要素(外部リソース読み込み)の
blocking
属性で指定できる値に、
blocking="full-frame-rate"
(hrefでURL指定した外部リソースの取得が完了するまで描画のフレームレートを下げる)が追加できます。
従来指定可能だったblocking="render"
(指定要素の取得完了まで描画を停止させる)に比べて、読み込み中に描画が継続される分、ユーザーインタラクションの待ち・遅延を避けやすい、という特性があります。
非表示埋め込みiframe内のメディア再生を一時停止可能に
Permissions-Policy
レスポンスヘッダーによる権限ポリシー
の設定項目に、「
media-playback-while-not-rendered
」が追加されます。
非表示の埋め込みiframe
でメディアが再生される場合、埋め込み元(iframeを呼び出す側)のWebサーバーの許可設定(
Permissions-Policy:
レスポンスヘッダーの設定)で、メディア再生を強制的に一時停止させられます。
適用条件として、埋め込まれるiframeが非表示設定(display:none;
等)になっている必要があります。
文章校正・推敲機能
- Rewriter API
…入力テキストの言い換え・冗長性解消等を行う機能が使えるようになります。
デバイス内にAI言語モデルが搭載されている場合に限り利用できます。
文章の自動新規生成
- Writer API
…箇条書きや概要等の情報をベースに、新規文章のライティングを自動で行う機能が使えるようになります。
デバイス内にAI言語モデルが搭載されている場合に限り利用できます。
※オリジントライアルは、サイト管理者がオリジントライアル管理画面から対象オリジン(ドメイン)を登録し、発行されたトークンをHTMLにmetaタグとして設置した場合のみ、期間限定で有効になります。(詳細はGoogleの解説
を参照)
仕様変更
選択時強調表示でOS設定の強調色を自動適用(Windows / ChromeOS)
- Windows版・ChromeOS版で、
accent-color
プロパティ(フォームのチェックボックス等の選択時強調色を指定する)のデフォルト色(もしくは
accent-color: auto;
指定時)に、OSの強調色設定が自動適用されるようになります。
従来macOS版で2021年に対応した機能でしたが、Windows版・ChromeOS版にも拡大適用されます。
独自に色指定を行う場合はそちらが優先されます。
WebAuthnの認証エラーのタイプ変更
- WebAuthn
(パスキー認証等)で、ユーザーが許可していないクロスオリジンiframeに
payment
認証情報を作成する場合、発行されるエラーのタイプが、
NotAllowedError
から
SecurityError
に変更されます。
エラータイプを検知して処理を切り替えるコードがある場合、対応のため該当部分を変更する必要があります。
Blob URLへのストレージパーティショニング適用
ストレージパーティショニング(プライバシー保護目的で行われる、端末内データ保存領域のサイト/ドメイン別分割)の仕様変更です。
- Blob URL(ブラウザがデータ保存・参照用に
createObjectURL()
メソッドで生成する一時的なURL)が、新たにストレージパーティショニングの対象になります。これによりセキュリティ的にはFirefoxやSafariと同様の実装となります。
- クロスサイトアクセス追跡情報をBlob URLに保存・参照する場合、埋め込み元ドメイン名(トップレベル/フレームオリジンおよび
has-cross-site-ancestor
のブール値)をストレージキーに指定しないと、クロスサイト追跡が遮断されます。 - レンダリング処理によりBlob URLへの別ドメイン遷移(トップレベルナビゲーション)が発生する場合、強制的に
noopener
(遷移先から遷移元へのアクセス権を遮断する)扱いになります。
PartitionedBlobURLUsage
ポリシーを設定すると、同ポリシーが有効な間は元の仕様に戻せます。 - クロスサイトアクセス追跡情報をBlob URLに保存・参照する場合、埋め込み元ドメイン名(トップレベル/フレームオリジンおよび
プリレンダリングの通信スキーム制限
- 従来プリレンダリング
はHTTP/HTTPSの両方で対応していましたが、Chrome 137以降はプリフェッチと同様HTTPSでのみ利用可能になります。
SSL非対応サイトでプリレンダリングを使用していたサイトは、サイト全体のSSL(HTTPS)移行が必要です。
SVG関連のエラー仕様変更
※参照:Chrome 137 beta - Chrome for Developers (2025/05/01)
https://developer.chrome.com/blog/chrome-137-beta
Roadmap - Chrome Platform Status
https://chromestatus.com/roadmap
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